自分が何をやりたいのか、わかりません。
キッと、睨みつけるような眼で彼女は言った。
この次の言葉を全身で拒否しているように見えた。
40代後半。50歳目前。
それなりのキャリア形成はしてきたつもりだった。
学校を卒業後、就職。
結婚して退職するが、育児が落ち着いた頃に社会復帰。
一般事務職で今も就業しているが、
キャリアアップは望めない環境である。
子供の成人に伴い、ライフキャリアを考え始めた。
これという確かなものもなかったが、
手当たり次第に講座や研修に参加した。
お金と時間をかけて資格も取った。
そこから更に上級資格へもシフトした。
女性起業塾や経営塾にも足を運んだ。
名刺を作った。
HPを開設した。
SNSの発信も始めた。
幸い今の職場は業務に差し障りがなければ副業に寛容だった。
様々なイベントや催しに参加し、
法人会やメンバーシップコミュニティーに参加した。
人付き合いも増えた。
ところが、
やればやるほど自分がわからなくなった。
自分の仕事が何なのかを見失った。
異業種交流会で名刺交換の際に
「あなたの仕事は何ですか?」
と訊かれて言葉に詰まった。
自分は何者なのか?と突きつけられる思いがした。
何人かに相談もしたし、指摘も受けた。
皆、口を揃えて言った。
「あなたは何がやりたいの?」
泣き出しそうになった。
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わからない時はわからないと言えばいい。
まずは、わからない自分を受け入れることが大切だ。
ゆっくり、丁寧にライフキャリアを振り返り、
自分の来し方をなぞってみることも必要だろう。
今ないものに、いきなり答は見つけにくい。
けれど、何かをしたい、という思いがあるのなら、
その思いの源泉を探ることだ。
そこにきっと種が潜んでいる。
そして、ひとつひとつを検証していく過程には
見たくなかった自分や、
思い出したくなかった自分がいるのだが、
この自分たちと向き合わない限りは
わからない迷宮からの脱出は難しい。
そして大抵の場合、
この自分たちに出会いそうになる度、
自らの手で出会いの扉を閉めている。
自分自身の人生なのだ。
自分自身で責任を取るしかなく、
自分自身でしか変えて行くことはできない。
誰かが何かをしてくれるなどと言うことは、ないのである。
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泣いていいですよ。
そう言うと彼女の目から涙が溢れた。
涙の温度が気持ちを緩める。
彼女が鎧を脱いで素を見せてくれて初めて、
一歩前へ踏み出す背中に寄り添える。
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